人類滅亡について 泉 満明

 

 地球は生物に対して決して優しい惑星ではないことを地球史は示しており、地球上に生物が現れてから35憶年経過しているが、古生物学者によれば地球はこれまでに5回の大量絶滅を経験しており、生息していた生物種の99%が絶滅しています。生物の歴史において絶滅は不可避で、種の絶滅は常に起きています。これまでに大量絶滅に巻き込まれた生物の多くは古生物学者以外には馴染みのないものですが、だからといって言って我々に全く縁のない出来事であるとは決して言えません。絶滅の原因が、現在の地球の状況に酷似していると考えられる古生代ペルム紀末(2億5200万年前)、中生代白亜期末(6500万年前)の巨大隕石衝突もあるのです。                               

 ホモ・サピエンスに関連する災害としては約25万年以降の出来事が重要といえます。災害の種類としては自然災害として、洪水、地震、火山噴火、森林火災、大型隕石の落下、地磁気変動、気候変動,、疾病のパンデミック、さらにサピエンスの活動による戦争、オムニサイドなどで人類の存在は多種多様の危険に晒されており、寺田虎彦は暗に「自然災害は忘れたころに来る」と言って、周期性があるとしている。このような環境で生活している人類はこれらの災害に対して,今までの経験から自然災害の規模,激しさの増大に注目して、現在の人類の技術力では完全に防ぐことは不可能であることを自覚し、災害の規模、性質を十分に調査、研究し、自然災害に対しインフラの安全よりも人命救助を最重点にした災害対策にすべきである。災害時の避難設備(最近の国際情勢を考慮して戦争被害も考慮した構造)、生活必需品(水、食品類、エネルギー、住居,など)を発達してきた技術を駆使して常に安全に確保すべきである。

 以上述べた様に自然、人間の争いによる災害で人間を含む生物は滅亡の危機が周期的に迫ってきているのにも関わらず多くの人々は関心が希薄である。

 大量絶滅に関して視点を変えてみましょう。すでに述べた天体衝突があったらこそ、私達人類の祖先である小型の哺乳類は食物連鎖の頂点にいた恐竜が排除された空白に入込み,過酷な環境の中を耐え抜いて現在の地位を得たと言えます。過去に大量の絶滅が繰り返されたおかげで、私達が現在の姿でここにいられるのは貴重な偶然の結果でしょう。

 約1万年前の氷期の終わりにも大型哺乳類の絶滅が起きていますが、その原因は気候変動加えて、人類による狩猟採集の影響もあったかもしれません。2011年に「ネイチャー」で発表された論文で現在の生物の絶滅率を地質学的に平穏な時期と大量絶滅が起きた時期と比較した結果、現在の生物の絶滅率が過去よりも高く6回目の大量絶滅に向かっていると結論付けました。人間の活動が地球規模で環境に影響を及ぼし、100万種の動植物が絶滅の危機に瀕しているとするレポートも国連から公開され、その影響は加速しているのですが、ティッピングポイントを超えるとやがて人類にも及ぶようになると推定されています。

 現在は、比較的温暖な気候ですが、これは地球にとっては「典型的」な気候ではなく、数10万年ペースで繰り返される氷期氷期の間に挟まれた「間氷期」であり、今の気候は次の氷期が訪れるまでの一時的状態に過ぎません。未来に訪れる氷期にそなえるべきである。寒冷な気候を避けるために生活を地中、海水中に移す技術開発をいそぐべきであろう。さらに、現在の技術力では困難であるが開発を進め未来に希望をもって宇宙(月、火星)に移住を考えるべきであろう。

  2023年に発表された世界終末時計が示した時間は人類の終末まで「残り90秒」と最も終末に近づいた結果となりました。北朝鮮のミサイル発射やウクライナ戦争におけるプーチンによる核爆弾の使用の可能性等によって核戦争の脅威が増加したこと、新型コロナや気候変動などの危険に向けた準備が不十分あることなどが背景にありますが、プーチン習近平金正恩などの問題ある人物達の行動次第では人類の生存時間はもっと短くなってくるのではないでしょうか。

 最後に、高名な天文学者カール・セーガンは、宇宙に他にも知的生命が存在するかと問われて「思わない。どんな種であっても僕らの様な進化の段階に到達したら自滅するだろうから」と答えました。いつ何時に誰が自滅のスイッチを押すのかしれない不安を抱える、21世紀の人類にとっては非常に重い言葉といえましょう。

 いずれにしても、地球は太陽系の進化により1億年に1%ずつ明るくなってゆき5 億年後には地球は太陽の熱の影響で海水が蒸発してしまい、そうなれば、熱地表は高温となり生物の生存が不可能になります。さらに75 億年後には地球は太陽に飲み込まれて、その一生を終えると想定されています。従って長い期間で見れば地球の行方に希望はないのかもしれません。

 ともあれ、「私達は全く偶然にも宇宙が緑豊かな春のような時期に生きている」という幸運に恵まれているということを忘れてはなりません。

 

 参考文献 泉 満明 著 「未来のためのミッション」 新潮社